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その道の技を知る プロフェッショナル ドローン撮影

まだ見ぬ美しい一枚を求めて

カメラマン吉川 出 さん

〔 会社員からフリーへの転身を機に、新たな挑戦 〕

海面スレスレを飛ばせば、波しぶきを身体に浴びるような臨場感を映し出す。紅葉の上を飛ばせば、さわさわと風に遊ばれる姿も捉えたダイナミックな眺望が広がっている。カメラマンの吉川さんは、ドローンでしか撮れないものに魅せられた一人だ。

大学を卒業した後、東京都・鍛冶町のササキスタジオにてカメラマンのキャリアをスタートさせた。スチール(静止画)撮影の技術を叩き上げで習得し、29年間勤めた。だが、2016年に会社が倒産してしまう。フリーになったのを機に「もともと趣味で飛ばしていたドローンを、長年培ってきたスチール撮影にも取り入れられないか」と、新たな挑戦を始めた。「昔からラジコンヘリを飛ばしていたのですが、一般向けのドローンが登場した10年前に知人の紹介で買いました。最初はラジコンヘリと同じ要領で飛ばせる面白さに惹かれたのですが、カメラを積んで空撮をやっている人がいるなら自分もやってみようと」。先駆けで始めていた人に教わりながら技術を磨いてきた。

〔 鳥の目線で写し出す、驚きと感動に満ちた光景 〕

「一番の魅力は、やっぱり自分では実践できないアングルで撮影できることですね。脚立より上がれて、ヘリよりも下がれる。それから、人の足では絶対にたどり着けない場所にも行ける」と吉川さん。
 空撮手法としては定番の有人ヘリコプターを使用した場合、離着陸以外は高度150m以上(人口密集地では300m以上)での飛行が航空法により定められている。ドローンはヘリの真逆で、高度150mを超えて飛ばすと違法になる。「この富士山の写真(①)は、伊豆半島の大瀬崎で100m位の高さから撮りました」。広角で撮影しているから、実際の高度よりも距離が近く感じるという。
 このほか、橋の上から30mの高さで撮影(②)したり、海面の上を低空飛行してみたり、ドローンのアングルは鳥のように自由で創造性豊かだ。実践するには技術と知識が必要だが、興味を抱いている人は多い。150m以内の領域に、想像もつかない光景が広がっているからだろう。

①2019年3月12日、静岡県・伊豆半島の大瀬崎にて撮影。

〔 自作機の強みを活かした高解像度での空撮 〕

吉川さんは、自分でカスタムしたドローン機体を許可申請して使用している。事前に試験データを作成するなど、許可取りの手間は既製ドローンよりも必要だ。それでも自作機にこだわるのには、理由がある。「スチール撮影で使っているカメラをドローンに積んで、まったく同じ画質で空撮したいんです」。大手メーカーの既製品にはカメラも組み込まれているが、動画撮影に特化しており、写真の最大解像度は1600万画素程度に留まる。それ以上を求めると、個人事業主では手が出しづらい価格帯になってしまう。
 吉川さんが撮影に使用するスチール専用の自作機は、2400万画素や5000万画素も可能となっている。「僕の空撮データは、通常のスチールと同じように加工できる。画質だけでなく、そこも自作機の強みですね」。見慣れた景色や建物も新鮮な姿で浮かび上がらせる、非日常の目線。その面白さを、美しい写真で証明している。

②2018年11月9日、群馬県・嬬恋村にて撮影。

IZURU YOSHIKAWA

1962年三重県生まれ。カメラマン歴32年。大学卒業後、株式会社ササキスタジオに所属。撮影技術を1から勉強し、習得する。2016年、ササキスタジオの倒産を機に独立。神楽坂のスタジオを拠点にスチール(静止画)の商業撮影を行う傍ら、新しい取り組みとしてドローン撮影にも挑戦している。

●神楽坂ベース(スタジオ):
 東京都新宿区赤城下町44 メゾンドイグレック101
●HP:http://www.moaipictures.com 
●Mail:izuru@jeans.ocn.ne.jp 
●撮影に使用するドローン機体はいずれも、航空法に定める全国包括飛行許可を取得して使用しています。