2019.09.01 12:00
お客様が考える 一歩先の履き心地へ。革靴なのに〈スニーカーのような履き心地〉は、いかにして誕生したのか?アシックス商事の企画開発部に、今年で10周年を迎えたテクシーリュクスの「これまで」と「これから」について話を聞いた。 機能性に優れた革靴をこれまでの市場にない価格で。テクシーリュクスが発売されたのは2009年。今から10年前、天然皮革(牛革)を使用した本格ビジネスシューズを驚きの価格で売り出した。そこに至るまでには、企画開発部の柔軟な発想と弛まぬ努力の日々があった。 当時のアシックス商事が得意な企画は、スポーツシューズのノウハウを活かした快適なカジュアル靴。ビジネスシューズ市場においては後塵を拝していたが、どうにかして市場シェアを獲得しなければならない……。 そこで企画開発部は「クッション性があるスポーツ系ソールを、スタイリッシュなデザインに搭載してみてはどうか」─そんな発想をもとに〈ソフト・ライト・フレキシブル〉をコンセプトにした革靴の開発をスタートさせた。また同時に、低コストに抑えながらも高品質な靴を安定して供給できる、独自の生産体制も追い求めていった。 そうして発売されたのが、王道のビジネスタイプと、カジュアルタイプ。〈価格革命〉のキャッチコピーとともに、税抜き価格で五千円という異例の売価を打ち出し、スタート当初から大きな反響を呼んだ。
〈価格革命〉を脱却し、心地よい履き心地が売りのブランドへ。好調な売り上げを維持し、2015年には累計200万足を突破した。だがこの年、発売開始より続けてきた〈価格革命〉というキャッチコピーからの脱却を目指している。 理由は、将来を見据えたとき「いつまでも価格という枠組みにとらわれたままだと、ブランド価値を高めにくくなるのではないか」という危惧だ。次の戦略として、価格とともに支持されている「優れた機能性」の認知拡大を目指し、今や代名詞となった〈スニーカーのような履き心地〉を新たなキャッチコピーとして打ち出したのである。 幅広いニーズに応えながら履き心地の良さへの挑戦が続く。世の中の人々が”本物志向”を求め始めた2016年。優れた機能性への挑戦を背景に、「上質」「日本製」、そして「履き心地」の極限を攻めた最上位モデル「ジャパンメイド」が誕生した。ヨーロッパ産の天然牛革を使用し、日本の職人による手仕上げで上質感を追求。美しい外観のまま履き心地の良さを体感できるように、ソール内部の見えない部分にクッション材を入れるなど、細部にまで徹底的にこだわった。 「ジャパンメイド」仕上げ作業の様子
数あるラインナップの中でとくに目を引くのが、「KONDOレーシング」のメカニック監修モデル「アブソリュートバリューズ」だろう。「マシンを快適な乗り心地にする技術を、革靴とシンクロさせたら面白いのではないか」。メカニックとの会話で新しい発想が生まれ、開発が始まった。シートと中敷の機能性を連動させたり、タイヤのイメージをソール意匠に反映させるなど、特別感のある履き心地となっている。 WEB CM 『texcy luxe』(2019年)
テクシーリュクスは、今年で10年目に突入した。アシックス商事の企画開発部は「こんな履き心地の靴は今まで履いたことがない!」と感動してもらえるような”お客様が想定している履き心地のさらに先”を目指している。 また近年では、実際にスニーカーのような履き心地を「体験」できる場の提供も始めている。「今後も体験の機会を増やして、歩くことに悩みを抱えている多くの人々に貢献していきたい」と企画開発部は語った。 取材・文:田裏夕貴 |