専門家が解説
靴もカラダもイキイキ! コスパの良い歩き方【3回連載】

【VOL.1】歩き方が靴とカラダのトラブルの原因に!?
検証!靴底の減り方で分かるコスパの悪い歩き方

理学療法士 廣田恭佑さん
理学療法士 廣田恭佑さん
サラリーマン、特に毎日ビジネスシューズを履く男性の靴のお悩みで多いのが「靴底の減りやすさ」。毎日同じ靴を履かないようにするなど、靴を長持ちさせる履き方はありますが、実は歩き方も重要!しかも歩き方は、靴のトラブルだけでなく、カラダのトラブルにも直結します。
今回は3回に分けて、靴が長持ちできてカラダのケアもできる、「コスパの良い歩き方」を専門家と徹底検証!第1回は、靴底の減り方から検証する、靴にもカラダにも良くない「コスパの悪い歩き方」をご紹介します。あなたの靴底の減り方は大丈夫ですか?
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■靴底が減るのは当たり前!重要なのは減り方

男性のビジネスシューズに関して多い、「靴底、特にかかとが減る」というお悩み。これは歩き方で解消できるものなのでしょうか。
「歩くという動作をする以上、まず、かかとから減ります。そして全く靴底が減らない歩き方はできません。ただ、歩き方によって、減るスピードや靴底の減り方は違いますし、カラダへの負担も違う。さらに、偏った減り方をした靴を履き続けると、さらなるカラダのトラブルの原因になったりするので、甘く見てはいけません。靴の減り方を見るだけでも分かることがあるんですよ」

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■社員が実験! 5ヶ月、ビジネスシューズを履いてみた

「靴底の減り方でも危険な歩き方かどうか分かる」ということで、実際に社員が試し履き実験をしてみました!

●アシックス商事社員3名が、5ヶ月間履き、計測。


実験結果は、
大きく分けて、外減り、
内減り、中央減りと分かれました。
果たして靴底の減り方から
何が分かるのでしょうか。

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■どんな減り方が危険信号? 要注意な靴底の減り方

計測結果を見て、靴底の減り方で廣田さんが気になる人はいますでしょうか。
「一般的に内減りが要注意なので、カミノさんですね。通常歩く際は、外のかかと、小指のほうから入って親指をついて、最後に内側に乗ってまっすぐ蹴りだすという流れなので、正常歩行していれば内側は減らないはずなんです。それでも内側からつくのは、いくつか理由があります。足関節が単純に緩い。偏平足気味。足底腱膜炎になっている。若い方だったらシンスプリントになっている。色々ありますね。いずれにせよ、ちゃんと筋肉がついていない状態なので、最初にべチャッとついてしまうのが特徴ではあります。
あと、靴の減り方に左右差がかなりあるのも気になりますね」

内減りの方や左右差が大きい方に出やすいトラブルは何でしょうか。
「内減りの方も左右差が大きい方も全身にトラブルが出ますね。内減りで特に多いのは腰痛です。3タイプで一番衝撃が強く、股関節で受けなかった分の衝撃がすべて腰にきて、腰で受けきれなかった分が肩とか首に行くので、肩こりにもなりやすいですね。左右差は、すべての人が多少はあるんです。ただ、左右差が大きいと肩こりや腰痛の原因になります。その次に膝痛ですね。ひどい人は、履いて半年くらいで靴底の減り方に差が出ますよ」
残りの2人の減り方(中央減り、外減り)に問題はないのでしょうか。
一般的に中央から45度くらいの外減りが一般的な減り方です。オザキさんは完全に中央減りではなく、外減りに近く、他の減り方も正常範囲のように見えます。基本的に中央から減ることは、良い悪いはあまりなく、個性の範囲です。中央減りの方で、あまりかかとに減りがなく、足先に減りが多いようであれば、下腿後面の筋肉が硬くなっていたり、短くなっていることが想定されます。その場合は常につま先重心になっているような姿勢になり、この場合も腰に負担がくる場合が多いですね。
逆に、タノさんは外減りですが、左足の前のほうの減りが強くて、左右差がちょっと大きいですね。あと、ボールジョイント部分から内側に抜けるような削れ方をしていて、つま先はあまり削れていません。つまり、つま先で蹴れておらず、足全体を支えていない歩き方をしていると思われます。一般的に外減りは問題がない歩き方ですが、そこらへんが気になりますね」

靴底から分かることは?

  • ●中央から45度くらいの外減りが一般的
  • ●内減りが要注意!歩き方が腰痛や肩こりの要因になっているかも
  • ●中央減りは個性の範囲。ただ、かかとに減りが少なく、足先に多い歩き方の場合は腰に負担がくることも
  • ●左右差が大きい人も要注意!歩き方が腰痛、肩こり、膝痛の要因になっているかも。ひどい人は履いて半年くらいで差が出る
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■歩いてみて分かった!歩き方とトラブルの関係

靴底を検証した後は、実際に歩き方を廣田さんに見てもらうことに。まずは、廣田さんが一番気になっていたカミノが歩いてみると…
「やはり、左右差がかなり大きいですね。右の骨盤が右回旋してて、そのまま行ってしまっている。目をつぶって歩いたら右に行ってしまうのでは、というカラダの使い方です。足の形も右が崩れて浮いてしまってます。そのため、筋肉の付き方、関節のバランスで負担を逃がしていると思います。その場合、必ず別の筋肉や関節でその負担を補うので、自覚症状がなくても、補っている部分を押すと痛みが強く出たり、年齢を重ねると症状がでてくることが多いですね。
歩き方は、外にしか重心が乗っていなくて、全身が動いていない。本当は親指のほうまで乗ってないといけないんです。あとはかなり歩幅が狭いです。歩幅が狭いということは、股関節が全然動いていない。そうすると、足の衝撃をお尻の筋肉で吸収できず、腰の筋肉で吸収してしまっていますね。それが腰痛の原因になっていると思います」

次にオザキが歩いてみると…
「左足を思いきり蹴って歩いていますが、歩幅はしっかりありますし、若干のクセくらいで基本的に問題ありません」

外減りでも、やや気になる点のあったタノは…
「歩き方、最後がきれいにトゥオフできていない。最後の離れるところが滑らかでなく、内に抜けている。内蹴りに。正常歩行であれば重心が親指と人差し指の間を抜けるような歩行になるのですが、タノさんは、親指もしくは親指の少し内側に重心が抜けています。この場合、足首が硬いことが一因で、腰痛の原因になっていると思います。」

良くない歩き方とトラブルの関係!

  • ●歩き方の若干のクセはみんなあり。大きくなければ問題なし!
  • ●靴底の減りに左右差がある=崩れたバランスによる負担を別の筋肉や関節が補い、支障が出る、もしくは将来的に出る
  • ●歩幅が狭く、股関節が動かないと足の衝撃をすべて腰が吸収。腰痛の原因に
  • ●重心の抜け方が正しくない歩き方は、足首の堅さが一因で、腰痛の原因になる
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■ほかにも色々!コスパの悪い歩き方

今回の3人とは異なる、靴やカラダを痛めるようなコスパの悪い歩き方はありますか。
「女性に多いのですが巻き歩きは良くないです。歩幅が出ず、力を入れずにダラッと。腰や膝にきます。男性に多いのは、引きずり歩きですね。あまり足を上げない。男性の骨のつき方から、骨盤が外を向きやすいので、ヤンキー歩きになりやすいです。その延長で、オジさんのダラーッとガニ股で足を前に出す歩き方。それらも膝と腰にきます。あと、かかとを打ち付けるような歩き方は、かかとの減りが激しいのはもちろん、膝を痛めますね」

その他のコスパの悪い歩き方

  • ●歩幅が狭く力を入れない、巻き歩き。靴底の減りが早く、腰や膝を痛める
  • ●あまり足を上げない、ヤンキー歩き&ガニ股だらっと歩きも膝や腰を痛める
  • ●かかとを打ち付ける歩き方は、かかとの減りが早くなり、膝を痛める
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■靴底チェックはカラダのバランスを見直すきっかけに

「筋肉や関節のバランスの悪さを直すには、手術が必要な場合などを除けば、実は歩き方を正すのが手っ取り早いんです。細かい筋肉を意識して直すのは難しいですから。ただ、歩き方は意識していない方が多いですし、歩いている姿を自分で見る機会はなかなかないので、靴底を見るのはきっかけとしてとても良いと思います」

次回、第2回は靴にもカラダにも優しい”正しい歩き方”や、
靴の選び方、履き方、買い替え方をご紹介します!

株式会社PLAST
代表取締役
理学療法士
廣田恭佑さん

【profile】
リハビリテーション病院に5年勤務し、地域におけるリハビリの必要性や患者様の夢や目標といった本当にやりたいことを実現するために起業。その後、~想いを叶える~を理念に、リハビリ施設、訪問看護ステーション、リハビリモンスター、ヒミツキチ、ジャングル・ラボ、フィジオデザインを設立。そのほかにも、理学療法士ならではの視点で姿勢の改善や障害になりにくいカラダづくりを目指す体操教室やパーソナルトレーニングもスタッフと協力しながら実施している。
http://plast-project.jp

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